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MOTOKO UCHIKATA

「発想人」の視点

内片 素子

NPOサポートセンター 経営企画本部長

_ PROFILE

NPOサポートセンター 経営企画本部長
百貨店勤務からスタートして日米欧の企業でマーケティングや人材育成、組織改革に関わる。 その後、社会課題をテーマとした仕事への関わりを志してNPOサポートセンターへ転じ、さまざまなNPOの組織強化と発展に尽力している。

行政・企業・NPO―
3つのセクターの
垣根を超える

阪神・淡路大震災があった1995年を「ボランティア元年」と呼びます。甚大な被害を前に、行政の支援を待つだけでなく多くの人たちが自ら支援に乗り出し、ボランティアが注目を集めました。それを契機に、任意団体が多かったボランティア団体の立場を強化すべきだとの声が高まり、「特定非営利活動促進法(NPO法)」が1998年に成立、現在に至っています。

かつては社会課題があると、それを解決するのは主に行政の役割でした。しかし、人口や税収が減ってきたこともあり、大きな政府ではやっていけないのは自明ですから、解決に向けて動いているNPOの力が必要になっています。また企業にとっても、いまや技術競争や価格競争だけでモノやサービスが売れる時代でもなく、社会的価値がある商品を積極的に購入していこうとする動きが消費者の中で大きくなっています。CSR(企業の社会的責任)から一歩踏み込んで、社会課題解決に結びつく新しい価値を持った商品を開発販売するなど、自社の強みを活かした社会貢献をするCSV(共通価値の創造)という考え方も浸透してきました。企業がそうした活動を行うとき、社会課題に近い場所にいるNPOは協働パートナーとなり得る存在です。一方でNPOは、ヒト・モノ・カネの経営資源の不足で悩んでいる場合が多い。その行政・企業・NPOの3つのセクター(トライセクター)をうまく連携させていく。それがNPOサポートセンターのミッションのひとつです。それぞれのセクターが気づかなかったことを、交わることで発見する。それぞれが違う視点を持っているからこそ、新しい発想が生まれるのだと思います。

社会課題の解決と
利潤追求の両立

人はどこかで枠や思い込みをつくってしまいがちです。たとえば、NPOが提供する物・サービスが低価格でなくてはいけないという枠・思いこみ。でも、購入者にきちんと価値を提供しているのなら、適切な価格を設定していいはずです。また、支援を行う場合、支援される側つまり受益者が社会的弱者のとき、対価として金銭をいただけない場合があります。受益者から対価をもらえるなら、ある意味、簡単なのです。でも、そうできないから発想を変えて知恵を出さなければならない。企業や行政を巻き込んで助成金を集める、支援のための仕組みをつくるといった、別の形での利益構造を考えないといけません。非常に見逃されがちなことですが、NPOにとってもビジネスセンスは必要なのです。

逆に、企業は利益を上げる目的で活動していますが、顧客ニーズを満すか、それ以上の価値を提供しないと利益は上がりません。その顧客ニーズには社会課題が含まれている場合も多い。一方に社会課題があり、一方に利潤がある。それを両立させていく。そのために新しい発想が必要とされるのです。最近は、社会課題解決と利潤追求を同時に追求しようと考える、社会起業家的発想を持った人たちが育ってきています。臆する集団の中で最初に海に飛び込む勇敢なペンギンに倣って、果敢な挑戦を行う起業家を「ファースト・ペンギン」と呼ぶそうですが、そんなファースト・ペンギンがどんどん増えていって欲しいですね。

ロジックは階段、
発想はジャンプ

私はある外資系企業で働いていたのですが、その会社は緻密な戦略をもってグローバルにビジネス展開を行っていました。非常にロジックに強い。グローバルにビジネス展開を行っているから、多種多様な人が働いていて、それぞれに色んなバックグラウンドや意見を持っています。人はそれぞれ違っていて当然なので、だからこそコミュニケーションを取ろう、と。そうした環境にいたので、自分の意見が唯一無二の正解だとは思わないし、他の人の意見を聞いたら、「そういう考えもあるだろうな」と思います。そのため、反対意見を言われても、反論する前にまず「どうしてそう思うのか」を聞きます。なぜなら、人にはそれぞれに前提があるから。その前提を知ることで相手が理解できるし、自分の発想も刺激される。そこが面白い。

ロジックは伝えられるし、わかりやすい。ロジックを積み重ねると階段を上っていけますが、でも、人の予想を超えることはできない。つまり、ジャンプすることはできないんです。ジャンプするためには発想が必要です。一方、ロジックのない発想はただの思いつきにすぎません。だから、私はロジックと発想の両方を大切にしています。

サイクルと振り子、
2つの運動が発想を生む

ビジネスであれ社会的なことであれ、課題解決には何らかの発想が必要だと思います。私が発想を生むためにやっていることは2つ。ひとつは「自分の考えをまとめる→顧客視点で考える→人と話す→そして形にする→それを見て、さらに考えをまとめる…」というサイクルを回すこと。そのプロセスから何かが生まれるように思います。外資系企業で化粧品を担当しているとき、「商品も流通も値段も広告も変えず、店頭の顧客体験だけで売上を上げる」というミッションを課せられ、このやり方で結果を出したことが、自分の発想という点で自信になっています。

もうひとつは、極を往復すること。右脳と左脳、理論と実践、自分と他者、文字と絵や写真、思考と無、過去と未来…一方だけでは見えなかったものが、対極に振ってみることで浮かび上がってきます。何かを突き詰めることも大事なのですが、発想という点に関しては、そうした逆の立ち位置に立つことでひらめくことが多い。震災後、なかなか眠れない日が続いたとき、人の薦めもあって農作業を行っていた時期があるのですが、あの無になって鎌で草刈りをしていた時間も発想が生まれる瞬間だったように感じます。ウォーキングやスイミングといった単調な動きを繰り返しているときも、よくひらめきますね。発想は頭脳によっているけど、その対極にある肉体運動が影響を与える。これも極の往復と言えるかもしれません。

同じでなくていい!

NPOに関わる仕事をするようになって、一番変わったのは、人との出会いが増えたこと。本当にたくさんの多種多様な人との出会いがあります。ビジネスの世界では利害関係があるのでここまでの出会いは難しい。NPOは利害関係を超えて、より広範なつながりを持っているのでネットワークがすごいんですよ。NPOで活動している人は本業を別に持っていることも多く、そこでの広がりもあります。だからインプットは格段に増えました。その分、課題にも次々と気づかされている状況です。単純な売上達成を超えた、社会課題を解決しながらNPO自体の組織強化といった難しい命題が存在する。その難しさが面白いし、難しくて面白いからこそ気づきも多いのだと思います。

20歳代の人や大学生と、たまたま深いお話をしたとき、色んな顔を使い分けて生きているように思えました。それは、生きる術でもあるけれど、閉塞感があるようにも見えます。ネットの時代になり、一見便利で楽しそうだけど、どこか疲れているし、息苦しさも感じている。それは新しい社会課題なのかもしれません。私は「みんなと同じでなくていい!」と思える社会にしたい。発想って、とても人間らしいことでしょう。人の強さの源でもあると思います。人はみんな違うし、違う人との出会いから新しい発想は生まれます。ただし、本当の自分を伝え、相手を理解するために、一歩踏み込んで丁寧なコミュニケーションを取らないと、違いは違いのままで不和を生むのです。「愛の反対は憎しみではなく無関心」という言葉がありますが、違いを認め合い、さらに違いの背景を知り合うことで、新しい発想を生んでいけたらいいですね。

Photo:Yoshiro Hayakawa

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